1.基礎技術としての超薄切片法
(3)脱水と包埋脱水 歴史的には脱水もアルコール、アセトンに始まり、DMF (N,H-Dimethyl Formamide)や樹脂脱水などさまざま行われてきた。しかし、最も安定しているのがエタノールの上昇系列による脱水で、これで十分と思われるのでここではエタノール脱水だけを取り上げる。脱水の順序は以下の通りである。あらかじめこのような濃度のエタノールを200mLずつ広口瓶に作製しておくと良い。50%〜99.5%
までの脱水はそれほど厳密ではなく、中の試料を落とさないよう慎重に瓶を傾けて中のアルコールを捨て、新しい高濃度のエタノールを広口瓶から注ぐことで行われる。 100% エタノールの作り方容量1Lのネジ口の広口瓶を用意する。この瓶の下から1/5位のところまで無水硫酸銅を入れ、つぎに試薬特級のエタノールを上部まで注ぐ。ネジ口の栓をしっかりと閉めてから、瓶を強く揺すり、無水硫酸銅を撹拌する。エタノールは白く濁るが、棚に載せ放置すると数時間で硫酸銅は沈殿する。この上澄み液を100% エタノールとして、ピペットで吸引し使用する。100%エタノールが少なくなったら、また特級エタノールを継ぎ足し、撹拌し放置する。無水硫酸銅が水色に変色するまで何回でも使用できる。また、99.5% エタノールとはこの試薬特級エタノールそのもの濃度である。 浸透(Infiltration)(樹脂への) 包埋剤の試料への浸透を促進するため行う処理である。 エポキシ系のような疎水性樹脂はエタノール100%でも容易に溶解しない。電子顕微鏡レベルで試料組織の隅々まで樹脂が行き渡るようにするにはエタノールにも樹脂にも親和性が高い溶媒(置換剤)に置き換える必要がある。これも歴史的には包埋する樹脂により異なる複数の置換剤が使用されてきたが、現在では微細構造観察にはエポキシ系樹脂を用いるので酸化プロピレン(Propylene
oxide)がもっぱら使われている。 浸透の実際:酸化プロピレンは非常に揮発性の高い有機溶媒であるので、ピペットで吸引するのは難しい。そこで50mLのビーカーに分注して使用する。サンプル瓶を傾けて100% エタノールを捨て、すぐに酸化プロピレンを注ぐ。 酸化プロピレン 15分 2回 (この間に樹脂を調合すると良い)。 樹脂の調合我々は米国PolyScience社のPoly/Bed 812を使用しているので、これを紹介する。樹脂の混合の割合はメーカーのプロトコールに従えばよいのであるが、重合した際多少硬めになるように調合している。樹脂30mLを作るための混合比は以下の通りである。 Poly/Bed 812 14.4mL 栓付きメスシリンダーにPoly/Bed 812, DDSA, NMAをこの順番で計量しながら入れ、栓をしてから上下逆さまにしながら良く混ぜ合わせる(図7参照)。適度に混合できたら栓をあけ、DMP-30を1mLの注射シリンジで正確に0.6mL分注し、樹脂に混ぜる。再び栓をして直ちに上下に強く振蕩し良く混合する。重合加速剤であるDMP-30を入れると橙色になり蛍光を発する。均一の硬さにするためにはこの時の振蕩混合が最も大事である。以下のような酸化プロピレン混合液を作った後の残りの大半の樹脂は翌日の包埋に用いるので栓をして、その周りをパラフィルでシールし、-20℃の冷蔵庫で保存する。
酸化プロピレン/樹脂1:1混合液の作製
包埋Step 1樹脂を冷蔵庫からだし、室温に戻るまで待つ。湿気を防ぐため栓は室温に戻ってから開ける。試料組織のオリエンテーションを考えると平板包埋が優れている。そのため、我々はカプセルを用いず直径約4cm深さ1cmのアルミの秤量皿を使用している。秤量皿に底から3mm位の高さまで樹脂を注ぐ。
Step 41時間後60℃のオーブンに入れ硬化させる。30時間で十分な硬さに達する。
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