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1.基礎技術としての超薄切片法

培養細胞の包埋とトリミング

 意外と難しいのは培養細胞の超薄切片作製である。一般に培養細胞は基質の上に重層することなく、一層で繁殖するため垂直方向には数ミクロンの厚さしかない。したがって、トリミングに失敗すると試料を失う。また、細胞を基質に対して平行に切り、視野を広くして観察しようとするのも難しい。さらに、カバーガラス上に細胞を培養し、樹脂に包埋した時、細胞を樹脂側に残し、如何にしてガラスを剥がすかも悩むところである。最近ではそのままトリミングできたり、また細胞層を容易に樹脂から剥がせたりする軟性の培養用プラスチックシートも発売されているが、神経の初代培養のようなデリケートな細胞培養には適さない。細胞が思うように増殖せず困った方も多いと思う。これらを解決する方法としてカーボン蒸着法がある。我々はカバーガラスにカーボンを蒸着し、その上に細胞を培養している。樹脂包埋後トリミング時にガラスを剥ぐとカーボン膜との境界で剥がれる。カーボン膜とその上の細胞は樹脂側に付着したままであるため、黒いカーボン膜が細胞の目印になる。そのため、カーボン膜を切ったところが細胞の底面である。このように細胞のどの辺の切片を作製しているのかおおよその見当も付く。カバーガラスにサファイアガラスを使用すればガラスの剥離がさらに容易になる。サファイアガラスはアルミ化合物の焼結で熱伝導が大変良くかつ硬いことから、我々は培養細胞の急速凍結に用いている。直径3 mm、厚さ0.05 mmのサファイアディスクにカーボン蒸着し、その表面に細胞を培養する。また、サファイアはアルミを含んでいることから温度変化による収縮も大きい。このため樹脂包埋し、トリミングしてガラスを露出させ、表面を液体窒素に瞬間的に浸けることにより、あとはピンセットで端を突くだけでガラスをカーボン膜から簡単に剥がすことが出来る。


 

超薄切片法に適した細胞の培養図

図31 超薄切片法に適した細胞の培養図

(注)
1 サファイアディスクの表面にカーボンを100〜200 nmの厚さになるように真空蒸着する(膜厚はそれほど重要ではない)。
2 蒸着面に非対称性の数字、例えば2または5など、をピンセットの先端で書き、膜面側を明瞭にする。(カーボン膜の上に細胞を培養するため)
3 カーボン膜面を上にして培養用のディッシュに入れ、上から細胞を蒔き、培養する。細胞種によりコラーゲンやポリリジンコートが必要ならばカーボン膜面上に塗布する。カーボン蒸着後かなり時間が経過したディッシュは70%アルコールで洗浄後、クリーンベンチで紫外線を照射しながら乾燥して使用する。

 

 


 

カーボン蒸着サファイアディスク上に培養した細胞の包埋後のトリミングとガラスのはずし方を示す図

図32 カーボン蒸着サファイアディスク上に培養した細胞の包埋後のトリミングとガラスのはずし方を示す図

(注)
1 固定、脱水、包埋までは前述の組織細胞と同様に行う。ガラス面を下にして包埋し硬化させる。糸鋸で切り出し、今度はガラス面が上に来るようにひっくり返してエポン台に接着剤で貼り付ける。
2 ガラスの大きさまでトリミングし、またガラス面に載っている僅かの樹脂をカミソリで落として、完全にガラスを露出させる。
3 ガラスを含む試料先端を2秒ほど液体窒素に浸ける。
4 尖ったピンセットまたは針でガラスの下を突くとカーボン膜とガラスの間できれいに剥がれる。樹脂側に残ったカーボン膜の表面は全く平坦であるので、表面はいじらず側面をトリミングし、サイズを小さくする。カーボン膜の樹脂側はすぐに細胞であるので、いきなりダイアモンドナイフで超薄切片を切る。したがって、ミクロトームでの面合わせは慎重に行う。

 

 

 

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