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2.免疫細胞化学


(2)免疫標識の実践技術

準備するもの:   

  • 一次抗体(標識したい蛋白質の抗体)
  • 10nm金コロイド標識二次抗体
     (一次抗体がポリクローナル抗体の時はGoat Anti-Rabbit IgG、モノクローナル抗体の時はGoat Anti-Mouse IgG)金コロイド粒子の大きさはいろいろあり、目的に応じて使い分ける。10nmのサイズがもっともよく使用される。
  • PBS(-) ( Phosphate buffer saline)
  • 4% BSA in PBS ( BSA=Bovine Serum Albumin はpH7近傍のものを使用、Fraction Vが一般的)
  • Glutaraldehyde
  • エッペンチューブ (250マイクロリットル, 1,500マイクロリットル用)
  • パラフィルム
  • 接着テープ
  • ピペットマン (10マイクロリットル, 200マイクロリットル, 1,000マイクロリットルなど3本程度)
  • ピンセット

標識手順:以下の操作はすべて水滴上の液体の上に浮かせるようにして行う。(図4参照)

  1. PBS水滴上にグリッドを浮かせ切片を洗浄(1分間)
  2. 4% BSAでブロッキング(5分間)
  3. 一次抗体と反応(1時間からovernight:普通2時間)一次抗体は1%BSAを含むPBSで希釈:ポリクローナル抗体の場合は100〜500倍、モノクローナル抗体の場合は約30倍前後が一般的である。
  4. PBS水滴上にグリッドを浮かせ切片を洗浄(1分づつ7回)
  5. 二次抗体と反応(1時間)
  6. PBS水滴上にグリッドを浮かせ切片を洗浄(1分づつ7回)
  7. PBSで希釈した2%Glutaraldehydeで15分間固定
  8. 蒸留水水滴上にグリッドを浮かせ切片を洗浄(1分づつ8回)
  9. 5%酢酸ウラン水溶液で染色(5分間)
  10. 形態観察用超薄切片の時と同様に洗浄(図28参照

 
切片の免疫標識過程を示す図
 
 

図4 切片の免疫標識過程を示す図 
(注)パラフィルムを適当な長さ(約60cm)に切り、上下を接着テープで実験台の上に貼り付ける。ここでは画面の都合上、上下二段の別々のパラフィルムに分けているが、実際は一本のパラフィルム上で作業を行う。また接着テープには記録のためこれから標識を行う蛋白質名を書いておくとよい。また、パラフィルムを覆っている薄い紙は一度にすべて剥がすのではなく、実験の進行にあわせて、水滴を載せるスペースだけを剥がすようにする。従って、実験が終了したときにすべての紙が剥がれることになる。グリッドの切片が載っている側をそれぞれの溶液に接するようにして、標識、洗浄の作業をする。希釈後の抗体の量は切片二枚あたり50マイクロリットル、また洗浄用のPBS、あるいは蒸留水の水滴は500マイクロリットルである。

 

 

マウス視細胞外節をオプシン抗体で標識し、金コロイド二次抗体で可視化した電子顕微鏡写真

図5 マウス視細胞外節をオプシン抗体で標識し、金コロイド二次抗体で可視化した電子顕微鏡写真
(注)オプシンが円板膜(Disc membrane)に存在することがよくわかる。

二重標識(染色)法

光学顕微鏡レベルの免疫細胞化学では一つの標本を複数の抗体で標識する多重標識が可能である。特に二重標識はごく普通に行われている。これは様々な色の蛍光標識を用いることで可能となり、電子顕微鏡のように白と黒の世界では困難である。しかし、二次抗体の金コロイド粒子径を変えることにより二重標識は可能である。現在販売されている金コロイド二次抗体には5nm、10nm、15nm、20nmがある。したがって、論理的には三重標識も可能のように思われるが、金コロイドは大きくなると抗原に付着しにくくなる傾向があり、同じ抗体を用いても標識密度は粒子径により著しく異なる。もっとも普通に使用されるのは5nmと10nmの金コロイドがついた二次抗体である。5nmは少し小さいと感じられるが、10nmとは容易に区別がつけられる。一方、10nmと15nmの組み合わせも可能であるが、意外と区別しにくい。
 同時に二つの抗体により標識をするには免疫動物の異なる二つの一次抗体が必要である。モノクローナル抗体(マウス)とポリクローナル抗体(ウサギ)を使用することが最も多い。また、ヤギで免疫したポリクローナル抗体とウサギで免疫したポリクローナル抗体を使用することも出来るが、金コロイド二次抗体として抗ヤギ抗体が手にはいることを確認しておくこと。他の動物で免疫した場合も同じで、その動物に対する金コロイド二次抗体が必要である。ここではモノクローナル抗体(マウス)とポリクローナル抗体(ウサギ)を使用した場合の例を紹介する。実技はすでに記載したものと同じであるが、抗体は二つを混合して用いる。図4の一次抗体によるincubationのところでは1% BSA-PBSにてモノクローナル抗体とポリクローナル抗体を混合した状態でそれぞれ約30倍、約200倍になるように希釈した抗体混合液を用いる。また、二次抗体のところでも同様にヤギ抗ウサギ抗体(5nm金コロイド付)とヤギ抗ウサギ抗体(10nm金コロイド付)をそれぞれ30培希釈になるように混合して用いる。それ以外は単標識の方法と全く一緒である。

コラム グリッドメッシュ

メッシュは透過電子顕微鏡で観察する試料を載せる小さな円形の金網であるが、現在材質や網目の形について様々なものが市販されている。100メッシュ、200メッシュと言う名称の100とか200とかいうのは空いている穴の数で、番号が大きいほど小さな穴がたくさんあいていることになる。電子顕微鏡の黎明期にあっては穴の形は円形が多かったが、現在では正方形が一般的である。観察中の試料の移動方向が理解しやすいこと、また同じ穴数のメッシュであれば正方形の方が開口率が高いことなどが普及の原因である。最近ではさらに開口率をあげるため網の線を細くしたthin barと呼ばれるメッシュも売られている。また、ピンセットで掴みやすいようにタブ付きのものもある。材質に関しては銅がもっとも普通であるが、ニッケル、金、モリブデンなどでもつくられている。免疫細胞化学では水溶液に浮かせて標識や洗浄を行うため長時間水溶液に接することになる。このため銅メッシュだとその一部が腐食し、コンタミとなることがある。特に溶液中に沈んでしまったときなどにその傾向が高い。このため、我々はフォルムバール支持膜を張ったニッケルメッシュを使用している。もちろん金メッシュであれば磁化することも腐食することもないのでさらに好都合であるが、柔らかいことと高価であることが難点である。


コラム 免疫細胞化学(免疫標識)にオスミウム酸やエポキシ系樹脂は本当に使用できないか?

この答えは「使用できる」である。ただし、抗原と抗体の性質に依存している。すでに本文中で述べているようにモノクローナル抗体の一部ではグルタールを固定液に用いるだけでも抗原を認識できなくなってしまう。裏を返せば抗原の多数のサイトを認識できるポリクロナール抗体では強い固定液で一部の抗原の認識サイトが潰れてもまだ標識できる能力があるということである。さらに固定液に対し強い抵抗力のある抗原(たとえば膜の内在性蛋白質)であればオスミウム酸で固定し、エポキシ系樹脂に包埋しても免疫標識が可能である。実際、我々はオスミウム酸固定した形態観察用のカエル視細胞のエポキシ樹脂切片を用いてオプシンの免疫標識をおこなった。アルデヒド固定し親水性樹脂に包埋した試料と比べると標識密度は半減するが、背景の微細構造は優れている。一度試してみる価値はある。しかし、優れたポリクローナル抗体と固定に強い抗原蛋白質との組み合わせがあってのことであり、オーソドックスな方法ではないことを理解して実験してほしい。



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